Hola México! by JDOX 2025 6月号
Vol.3 : 職人の技が光る、アガベ蒸留酒メスカルの世界


Q:16 世紀、スペイン人がメキシコに蒸留技術を持ち込んだことで生まれたお酒とは?
A:テキーラ …… ではありません!
メキシコを代表する蒸留酒と言えば「テキーラ」。そのため、きっと歴史も長いに違いないと思われるかもしれません。ですが、答えは「メスカル」です。
メスカルとはアガベ(リュウゼツラン)を主原料とする蒸留酒のこと。それってテキーラじゃないの?と思う方もいるはず。そもそもテキーラとは、アガべから作る蒸留酒のうち、ブルーアガべだけを使用し、ハリスコ州テキーラ村とその周辺で製造されたものだけに与えられる称号です。つまり技術的には、テキーラはメスカルの一種ということになります。
そのメスカル、最近では日本でもじわじわとその名が知れ渡るようになってきています。メキシコのスタートアップコンサルティング事業を行う「exopap」のデータによると、日本はメスカル輸入国の上位6位にはいっているそうです。
ですが、実はメキシコにおいてすら、その人気が高まったのはここ 15年程のこと。メスカルと言えば「安酒」「お金のない労働者向け」といったマイナスイメージがつきまとっていました。アメリカでの名声を足掛かりに、世界中で「メキシコのお酒の王様」というイメージを獲得したテキーラとは大きな差です。
長いあいだ日陰の存在になっていたメスカルですが、2010 年頃からメキシコ国内でも再評価され始めました。ニュースや雑誌にも取り上げられるようになったメスカルを知って、興味をひかれた私。2013 年にオアハカ州のメスカルブランドの工房を訪問しました。
メスカルの製造工程は収穫したアガベの球茎(ピーニャ)を蒸し焼きにするところから始まります。土を掘った穴にピーニャを詰め、布をかぶせて数日。蒸しあがったピーニャを、今度は馬が石臼を引っ張って細かく砕きます。砕かれたピーニャは樽に入れて発酵。発酵した液体を銅製の蒸留器に入れ、薪で火をおこしながら蒸留。ようやくこれでメスカルの出来上がりです。
一連の工程を工房の方に説明していただいた後「これって、いわゆる伝統的な方法の紹介で、今は工場で作ってるってことで すよね?」と質問しました。ところが「いえ、今でもこの方法で作ってますよ」という驚くべき答えが返ってきたのです。
メスカルはこうした「アルテサナル」つまり手作業を基本に作られています(現代では、一部、作業を機械化しているブランドもあります)。アガベの種類や産地というだけでなく、職人の技によって味わいがまったく異なる。そこにメスカルの面白さがあるのでしょう。メスカルは、スモーキーな香りが特徴的です。これは、ピーニャを蒸し焼きにすることで生まれますが、メスカルファンはこのスモーキーさのトリコになってしまうものだそう。
伝統的な飲み方はオレンジをかじりながらストレートですが、お酒に強くない方でも楽しめるカクテルレシピもあります。都内のメキシカンレストラン&バーで働くメキシコ人に聞いてみたところ「テキーラより飲みやすいという日本人が多いね」とのこと。ぜひ一度、その奥深い世界を覗いてみて下さい!
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