Hola México! by JDOX 2026 2月号
Vol.11 : タコス戦国時代


「Batalla de tacos(タコスの乱)が始まってる!」
都内の某メキシカンレストランで食事している際、タコスの美味しさに思わずメキシコ人夫がこうつぶやいていました。そう、いつの間にか日本、特に東京近郊では、さながらメキシカンレストランの群雄割拠。在日メキシコ大使館のサイトによると日本国内にはタコスを含むメキシコ料理を提供しているレストランが400以上もあるそうです。
私がメキシコ料理と出合った2000年代と現在とで大きく違うなと思うのは、まずコーントルティーヤを提供するお店が増えていること。メキシコの北部では小麦粉のトルティーヤを使うため、小麦粉のトルティーヤが邪道というわけではありません。ですが、スペイン侵攻以前から食されてきたという意味では、伝統的なトルティーヤはトウモロコシといえるでしょう。
そして、そのコーントルティーヤのクオリティーが格段にレベルアップしています。おそらく、なのですが、日本で提供されるトルティーヤがしっかり「ニシュタマリゼーション」を経て作られるようになってることが理由の一つだと思っています。ニシュタマリゼーションとは、石灰水を使ってトウモロコシを下処理すること。この工程がトウモロコシを柔らかくし、トルティーヤを美味しくしてくれるそうです。
「トルティーヤを作ってる最中にかまどの灰が偶然入って『あれ、美味しくなった』ってなったらしいわよ」とは料理好きのメキシコ人叔母が話してくれたニシュタマリゼーション誕生秘話。なんにせよ、美味しい上に栄養価も高くなる、大切な工程です。
海外の日本食レストランで時折「ご飯のせいで、全体的に残念」と感じること、ありますよね?主食の味は、主菜やおかずの味を左右するといっても過言ではない中、トルティーヤの質が上がっていることが、日本でのメキシコ料理の広がりを支えているのでしょう。


さて、その美味しいトルティーヤに何を挟めばタコスといえるのか。答えは「なんでも」。牛肉、豚肉、鶏肉からシーフード、そして野菜まで、好きなものを好きなように挟んで食べれば、それはすべてタコスです。そもそも「タコ(ス)」とはナワトル語の “tlaco”=半分、真ん中という単語が由来といわれています。つまり、トルティーヤにおかずを挟んで半分に折った食べ物がタコス、ということ。
私が衝撃を受けたタコスはトルティーヤの中にご飯とゆで卵をはさんだものでした。一説によると、メキシコ人は米を野菜と認識してるそうなので、タコスとしてアリな組み合わせではあるものの…焼きそばパンを彷彿とさせる、食べ盛り男子向けのようなタコスは一つ食べれば満腹請け合いなメニューでした。
それから、まだ日本では食べられそうもないので、ぜひ現地にて試していただきたいのが「ウイトラコチェ」。ウイトラコチェとは、黒穂病にかかって奇形になったトウモロコシなのですが、これが炒めてトルティーヤにはさむと美味!一見「うーん?」というビジュアルなのですが、歯ごたえもありおススメです。
それにしても、灰が入ったトルティーヤを食べたら意外に美味しかったとか、病気にかかったトウモロコシを果敢にタコスにして食べてみたら案外イケた、とか。料理は勇気ある先人たちによって産み出されてるのがよくわかりますよね?
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