Hola México! by JDOX 2026 6月号
Vol.14 : ワールドカップ狂騒曲

左)ピラタのユニフォーム。両端には某有名キャラクターも… 右)メキシコ1勝目を祝い、レフォルマ通りに集まる人々。ワンコもメキシコハチマキで応援
始まりましたね、サッカーワールドカップ!「サッカーのルールを知ったのは大学生になってからだった」というくらいサッカーに疎いメキシコ人夫を持つ私ですら、今回のW杯は気になってしまう。それはひとえに、メキシコが開催国の1つになっているためでしょう。
1970、86年に続き、3度目の開催国というのはどうやら史上初めてのことらしく、ホスト国としてメキシコも気合が入っています。世界中からサッカー選手、そしてファンを迎えるためにベニートフアレス空港をはじめ、地下鉄の駅などのインフラを億単位の資金を投じて改修してきました。
でもそこはメキシコあるあるで、改修工事はどれもぎりぎりの日程で完了…したのかどうか怪 しい部分もありました。空港に至っては、改修した歩道橋の屋根の一部が、開会式直前に落ちるというハプニングも発生。さすが突貫工事のメキシコ、と半ば懐かしい気持ちでニュースを見ていた私です。
W杯に関連したニュースで「メキシコらしさ」を感じたもう一つの話題が「ピラタによる経済的な損失」です。ピラタとは海賊のこと。メキシコでは海賊版(模造品)の製品を指す言葉でもあります。
メキシコを訪れたことのある人ならご存じの通り、日ごろから街にはピラタがあふれています。公開直後の映画はすぐにDVDとなって販売されますし、日本生まれのキャラクターたちも「なんか違う感」をかもしながら道端で売られています。あまりに日常的にピラタを目にすることが多いので「模造品の販売も購入も著作権侵害という立派な犯罪である」という意識は、残念ながらメキシコには根付いていません。
ニュースでは、ピラタのW杯グッズ販売額はメキシコシティだけでも4億ペソ(約36億円/1 ペソ=9円)にのぼると報じていました。本来、公式の商品だけを扱っていれば得られていた税収などがピラタによって失われており「ピラタはメキシコ社会の害悪そのものだ」などと、ある弁護士がニュース番組で熱弁をふるっていましたが、そう簡単に一刀両断できないのがピラタなのだろうと思います。
というのも、ピラタ自体がそもそもメキシコの社会的構造から生まれた「必要悪」なのではないかと思うからです。メキシコでは非正規経済(インフォーマルセクター)が労働力の半分近くを占めると言われています。ピラタを生産し、流通させ、販売することは正規雇用に就けない人たちの「セーフティネット」とも考えられるのです。
その上、そもそも1000ペソ以上もする公式ユニフォームを簡単に買える人々がどれだけいるのかという点もあるでしょう。「1000ペソでも200ペソのものでも、ユニフォームを着てメキシコチームを応援する気持ちには変わりがない」というのは、ニュースでインタビューされていたファンの発言。ピラタを着ていても、思いはピラタではない!ということでしょうか。表立ってピラタを支持するつもりはありませんが、「害悪」と言い切ってしまうこともできない問題がそこに は横たわっていると感じます。

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