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Hola México! by JDOX 2026 8月号

Vol.16 : メキシコの栄養素

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トルタをサルサに浸した「トルタ・アオガーダ」はグアダラハラの名物
トルタをサルサに浸した「トルタ・アオガーダ」はグアダラハラの名物

「そろそろ、日本独自のタコスレストランのフランチャイズが出てくるんじゃないかな」。そんな話を、フランチャイズビジネス誌を出している会社の社長さんから聞きました。それくらい日本において一大ブームとなっているタコスです。


タコスと言えば、おいしいことはもちろんながら「ビタミンT」を豊富に含む栄養食ですからね…って、え? そんなビタミン、初めて聞いた!という人も多いでしょう。


もちろん、本当にそんな栄養素があるわけではありません。「ビタミンT(Vitamina T)」とはメキシコで使われる俗称で、Tacos(タコス)、Tortas(トルタ)、Tamales(タマレス)など、Tから始まる庶民的な食べ物をまとめてこう呼びます。


共通するのは、街角で気軽に買えて、安く、おなかをしっかり満たしてくれること。まさにメキシコ人の暮らしに欠かせない“栄養素”というわけです。


まだ日本ではなじみのないトルタは、簡単に言えば、メキシコ版のサンドイッチ。ボリージョやテレラと呼ばれるパンに切り込みを入れ、ハムやチーズ、あるいはビーフカツと共にアボカド、豆のペースト、唐辛子などを挟みます。中身は店や地域によってさまざま。1つ食べればかなりの満腹感を得られる、庶民のファストフードです。


また、タマル(タマレス)は朝ごはんの定番。トウモロコシの粉とラードを混ぜた生地に鶏肉やサルサ、モレなどを入れてトウモロコシやバナナの業などで包んで蒸した料理です。こちらは、いうなれば「メキシコ版ちまき」。起源はスペイン人がやって来る以前にまでさかのぼる伝統食です。


メキシコシティでは、このタマルをさらにパンに挟んだ、通称「guajolota(ワホロタ)」も人気です。トウモロコシのちまきを小麦のパンで挟むという、最強の炭水化物爆弾。安くて腹持ちがよく、忙しい朝にもさっと食べられる。これぞビタミンT の精神を体現した食べ物かもしれません。


タマレス大好きだった私は、毎年健康診断のフィードバックで「今年も体重増加傾向。朝ごはんのタマレスは控えましょう」と言われていました
タマレス大好きだった私は、毎年健康診断のフィードバックで「今年も体重増加傾向。朝ごはんのタマレスは控えましょう」と言われていました

「ビタミンT」という言葉が、いつからメキシコで使われているのかは定かではありません。ただ、少なくとも 2004年にはメキシコの新聞記事で「かの有名なビタミンT」として登場し、タコス、トルタ、タマレスがその代表として挙げられています。つまり、そのころにはすでに説明不要の言葉として定着していたのでしょう。安くて、手軽で、腹持ちがいい。ビタミンTは今も昔も、働く人や学生たちのおなかを満たすストリートフードであり続けています。


そんなビタミンTに注目した、その名も『Vitamina T』という本が、今年4月にアメリカで発売されました。紹介されているのはタコス、トルタ、タマレスだけではありません。Tostadas(トスターダ)に加えて、最後は「Todo Lo Demas(その他すべて)」。「3つのT」に限定せず、ビタミンT=メキシコのストリートフード文化そのものとして紹介しているのが興味深いところです。


メキシコの食文化を象徴するビタミンT。日本でもタコスだけでなく、トルタやタマレスといったさまざまな“T”を気軽に摂取できるようになったとき、単なる一過性のタコスプームではなく「日本にメキシコ料理が定着した」といえるようになるのかもしれません。




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